(画像出典https://www.google.com/imgres?imgurl=https%3A%2F%2Fi2.kknews.cc%2FSIG%3D1sogfpu%2Fctp-vzntr%2F15327491999820ssor02r41.jpg&imgrefurl=https%3A%2F%2Fkknews.cc%2Fentertainment%2F8oz64xe.html&tbnid=tkfnC-F3GG6pVM&vet=1&docid=a7JwzJFBQXbKSM&w=640&h=425&q=%E6%89%B6%E6%90%96%20%E5%A4%AA%E6%B8%8A%E9%A2%A8%E6%99%AF&hl=ja-JP&source=sh%2Fx%2Fim )
そして、今私がいる太渊。皇族は斉氏。国土には致命的な特徴があった。圧倒的に水が多いのだ。内陸で海こそ無いものの、川、湖、池、滝、沼等が連なり、皇都の昆京は周囲を大河に囲まれた水の都だとか。故に国家の最大の要素は治水だった。四方を巡る水を利用して水運が発達し、小型舟を操る渡し守が数多くいる。
今の皇帝は齢七十を越え、もうすぐ在位何十周年かになるらしい。皇太子と第三皇子が跡継ぎを争っているが、政治の実権を一身に担っているのは国公の斉震。元は臣下ながら皇族の姓を授かり、皇帝の下、万人の上の地位を手に入れたとか。
だが、私がいる宇文府は、皇都から遠く離れた泉都にあった。宇文氏は古くからの名門で、地方官を務めており、泉都を治める皇族の分家の元で行政を統括していた。
勿論、この長い話を一時に聞いた訳ではない。凝珠は侍女の中では等級の高い側仕えで、私に付き添って、細々とした繕い物などをやりながらゆっくりと話してくれた。私も縫い物は出来たので、押し問答をした挙げ句、二人で針を持ちながら喋ることにした。これなら遊んでいる訳ではない。
各国の事情や、皇族の話はすらすらと聞かせてくれたが、ことこの屋敷の事情になると、彼女は口が重くなった。身分差から来る遠慮かと思ったが、それだけではないらしい。だが日が経つ内に、私も焦りだした。このままこの世界にいるしかないのなら、自分の事さえ知らずにどう生きていけばいいのだ?
「凝珠、お願いよ。言いにくい事でも正直に言って。分かるでしょう、私が何も覚えていないのは嘘じゃない、本当だと。このままでは、生きていけないの。貴女に聞いた事は他人には言わないわ、誰も罰を受けないようにするから。答えてくれるのは、貴女しかいないのよ」四日目の昼過ぎ、私は訴えた。
凝珠は聡明だった。そして慎重だった。訳もわからず世界が変わってしまった私にはこれ以上無いほどの有難い存在だったが、一度目に聞いても当たり障りの無い返答しかしないので、未だに屋敷内の人間関係は雲をつかむような話だった。
後になって、私は彼女の慎重さがどれ程得難いものだったか、私を守ってくれた事がどれ程幸運だったか悟ったのだが、それはまだ先の話。人間、今が大切だ。
「お嬢様、記憶を無くされた夜、何があったのか、私も知らないのです。ただ、夫人が婚約の話を持ち出されてから、お嬢様はよく黙りこんでおられました。元から口数が多い方ではありませんが、もしや思い詰めた事が理由ではないかと…」
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